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管理職の力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方

管理職の力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方
「来月からマネジメントもよろしく」と言われて管理職になった人に、マネジメントのやり方を教えてくれる人は案外いません。そしてプレーヤーとして優秀だった人ほど、ここでつまずきます。自分の担当を持ったまま管理も引き受ける、プレイングマネージャーならなおさらです。管理職の伸び悩みは、たいてい能力の不足ではなく、どの力がどう足りないのかを言葉にできていないことから来ています。

ここでは、初めて部下を持つ管理職の力を6つの軸に分け、それぞれを5つの段階として整理します。自分がいまどのあたりにいて、次に何を上げればいいのかを決めるための物差しです。

後半では、目指す地点の決め方から伸ばす順番、次に上げる軸の絞り方まで、この物差しの使い方も扱います。

管理職の力は6つに分けられる

「マネジメントができる」と一口に言っても、その中身は同じではありません。部下との面談は丁寧なのに、締め切り前は自分が徹夜している人もいれば、決断は速いのに部下が育たない人もいます。ひとまとめにしている限り、次の一手は決まりません。
任せ方
「自分でやったほうが早い」を、卒業できているか
目標・評価
何がゴールで、何が評価されるかを示せているか
育成・フィードバック
部下の現在地を言葉にして、次の一歩を渡せるか
判断・決断
情報が揃わなくても決めて、責任を持てるか
チーム運営
人の凸凹を組み合わせて、チームの段取りを作れるか
上と横の調整
経営と現場、他部署の間をつなげられるか
1on1や部下のコンディション把握といったメンタル面のケアは、個別に向き合う部分を育成・フィードバックに、チーム全体の状態として見る部分をチーム運営に含めています。

この6つを、それぞれ5段階に分けます。段階が言葉になっていると、「なんとなくうまくいかない」が「この軸のこの段階にいる」に変わります。

全体はこの一枚に収まります。軸ごとに横へ読んで、いちばん近いマスに印を付けてください。6つの印を縦に見比べると、自分の凸凹が見えてきます。
Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5
任せ方 自分でやってしまう 丸投げか口出しか 範囲を決めて任せられる 大きさを変えられる 手放していける
目標・評価 目標を面談直前まで開かない 日々とつながらない 基準を示し説明できる 納得を作れる 仕組みを設計する
育成・フィードバック 「頑張れ」しか言えない 指摘の列挙になる 次の一歩を渡せる 問いで気づかせる 育つ仕組みを作る
判断・決断 聞き返してしまう 揃うまで待って遅れる 期限までに決められる 決め方を使い分ける 基準を共有する
チーム運営 頼みやすい人に集中 負荷が見えていない 段取りを組める 組み合わせで成果を作る チームの形を設計する
上と横の調整 そのまま流すだけ 板挟みで消耗する 翻訳と交渉ができる 外から資源を持ってくる 経営に関われる

5つの段階で管理職の現在地を測る

Lv2以降の冒頭には、前の段階から何が変わるのかを一文で置いてあります。まずそこで自分の当たりをつけ、6つの軸ごとの記述で、いちばん近い段階を確かめてください。記述はどれも典型例なので、ぴったり一致していなくて構いません。Lv1は脱しているが、Lv3には届いていない。その場合は、間のLv2です。

読むときのコツが1つあります。自分がよく見えるほうを選ばないことです。「やろうと思えばできる」ではなく、直近のマネジメントで実際にできたほうを取ってください。ここを甘く見ると、あとの判断がすべてずれます。また、優秀な部下のおかげでチームが回っている状態を、自分の任せ方の成果と取り違えないでください。

AIを使ったかどうかは、判定には関係ありません。面談の準備や評価コメントの下書きをAIに任せても、部下の実際の仕事に照らして自分の言葉に直せているなら「できた」に入ります。出てきた文面をそのまま読み上げたなら、それは「頑張れ」がAIの文章に変わっただけで、Lv1と同じです。

Lv1 プレーヤーのまま、席だけ変わる

肩書は変わりましたが、仕事のやり方はまだプレーヤーのままです。
任せ方
「自分がやったほうが早い」で、結局自分でやっている
目標・評価
期初に書いた目標を、次に開くのは評価面談の直前
育成・フィードバック
指導の語彙が「頑張れ」と「もっと丁寧に」の2つ
判断・決断
決めるべき場面で、「みんなはどう思う?」と聞き返す
チーム運営
仕事は頼みやすい人に集まり、頼みやすい人から疲れていく
上と横の調整
上の指示はそのまま下へ、下の不満はそのまま上へ流れていく

Lv2 マネジメントを始めたが、型がない

Lv1との違いは、管理の仕事に手を付けていることです。ただし、型がないのでやり方が場当たりになります。
任せ方
任せてはいるが、丸投げになるか、細かく口を出すかのどちらかになる
目標・評価
目標は伝えているが、日々の仕事とつながっていない
育成・フィードバック
指摘はできるが、できていない点の列挙になり、次の行動につながらない
判断・決断
決められるが、情報が揃うまで待つので遅れる
チーム運営
割り振りはするが、チーム全体の負荷までは見えていない
上と横の調整
伝え方は選べるが、上と下の板挟みになって消耗する

Lv3 チームを、任せられる

Lv2との違いは、任せる・示す・決めるに自分の型があることです。プレーヤーの時間と管理の時間を、自分で線引きできています。
任せ方
目的と期限と判断してよい範囲を決めて任せ、途中に確認の場を持てる
目標・評価
ゴールと評価の基準を言葉で示し、評価の理由を説明できる
育成・フィードバック
部下のどの力がどう足りないかを言葉にし、次の一歩を1つに絞って渡せる
判断・決断
情報が揃わなくても期限までに決め、理由を説明し、結果の責任を持てる
チーム運営
人の得意不得意と負荷を見て、チームの段取りを組める
上と横の調整
上の意図を翻訳して部下に伝え、現場の実情を根拠に上と交渉できる
ここが、チームをひとつ任せられる状態のひとつの区切りです。

Lv4 人に合わせて、やり方を変えられる

Lv3との違いは、型を人と状況に合わせて使い分けられることです。同じやり方を全員に当てはめなくなります。
任せ方
部下の段階に合わせて、任せる仕事の大きさを変えられる
目標・評価
部下ごとに目標の高さを調整し、評価への納得を作れる
育成・フィードバック
答えを渡すのではなく、部下が自分で気づく問いを立てられる
判断・決断
試してだめなら戻せる決定はすぐ決め、人事や顧客への約束など戻せない決定にだけ時間をかけられる
チーム運営
人の組み合わせで、1人ではできない成果を作れる
上と横の調整
他部署を巻き込み、チームの外から人や予算を持ってこられる

Lv5 自分がいなくても回る形を、作る

Lv4との違いは、対象が目の前のチームから仕組みに変わることです。自分が回すことより、自分がいなくても回ることが成果になります。
任せ方
権限の委譲を設計し、自分の仕事を計画的に手放していける
目標・評価
評価の仕組みそのものを設計し、チームの方向を揃えられる
育成・フィードバック
基準・面談・教材といった育成の仕組みを作り、人が育つチームにできる
判断・決断
決める基準をチームに共有し、自分がいなくても判断が揃うようにできる
チーム運営
採用や配置から関わり、チームの形を設計できる
上と横の調整
経営の議論に参加し、会社の方針づくりに関われる

管理職が目指すのは全軸Lv5ではない

5段階と聞くと、全部をLv5にするのがゴールに見えます。そうではありません。

Lv5は経営に近い立場の姿であって、全員が目指す地点ではありません。チームをひとつ預かる仕事は、各軸がLv3であれば問題なく回ります。
補足
当面のゴールは、全軸Lv3です。突出した軸を作るより、Lv1やLv2で止まっている軸を無くすほうが、チームは安定します。
全軸がLv3に揃ったあとのLv4は、全員が順に目指す段階ではなく、役割で選ぶ段階です。複数チームを束ねる、次の管理職を育てる側に回るなど、立場が変わるタイミングで、その仕事に使う軸から上げていきます。
もうひとつ、ゴールの置き方で注意があります。平均点を上げることをゴールにしないでください。6軸の平均が3.2から3.4になったところで、チームで何が変わったのかは説明できません。上がったのはどの軸か、そこで何ができるようになったのかだけが意味を持ちます。

伸ばす順番を飛ばさない

6つの軸は横並びではありません。土台になる軸が低いまま上の軸を鍛えても、どこかで頭打ちになります。

管理職の場合はこの順番です。それぞれ、まずLv3まで上げることを目安にしてください。
  1. 任せ方
    目的と期限と判断の範囲を決めて任せて、途中に確認の場を持てるところまで。
  2. 目標・評価
    ゴールと評価の基準を言葉で示して、評価の理由を説明できるところまで。
  3. 育成・フィードバック
    部下のどの力がどう足りないかを言葉にして、次の一歩を1つに絞って渡せるところまで。
  4. 判断・決断
    情報が揃わなくても期限までに決めて、理由を説明できるところまで。
  5. チーム運営
    人の得意不得意と負荷を見て、チームの段取りを組めるところまで。
  6. 上と横の調整
    上の意図を翻訳して伝えて、現場の実情を根拠に交渉できるところまで。
任せ方が最初にあるのは、管理職の伸び悩みの正体が、多くの場合スキル不足ではなく時間不足だからです。「自分がやったほうが早い」を続ける限り、育成にも判断にも使う時間がそもそも生まれません。任せることは部下のためである以前に、管理の仕事を始めるための条件です。

育成・フィードバックが3番目で、目標・評価が先にあるのは、基準のないフィードバックは感想になるからです。何がゴールかが共有されていてはじめて、「どの力がどう足りないか」は指摘ではなく道案内になります。4番目の判断と5番目のチーム運営は、チームが動き出してから本番が来る軸です。決めるべき場面も、負荷の偏りも、任せて回し始めたあとに見えてきます。

上と横の調整が最後なのは、後回しでいいという意味ではありません。チームが回っている管理職の言葉には、上にも横にも自然と説得力が付いてきます。順番の先に来るのは交渉の技術ではなく、回っているチームです。

1軸だけ選び、1段階だけ上げる

現在地が分かったら、次に伸ばす軸を1つだけ選びます。選ぶのは、前の章の順番で最初にLv3に届いていない軸です。一度に全部は上がりません。6軸を同時に意識した瞬間、どれも動かなくなります。

選んだら、上げるのは1段階だけです。Lv2の軸をLv4にしようとせず、Lv3にすることだけを考えます。

上げ方は、難しく考えなくて構いません。次の段階の記述が、そのまま次の仕事で試す行動です。任せ方をLv2からLv3にするなら、次に部下へ仕事を渡すとき、目的と期限と判断してよい範囲を先に決めて伝える。その繰り返しです。
このとき、「なんとなくLv2」で済ませないでください。どの場面でそう判断したのかを、具体的に言葉にします。根拠が書けない判定は、次に何をすればいいかを教えてくれません。

あわせて、その段階に上がったと言える条件も先に決めておきます。決めていないと、上がったかどうかを気分で判断することになります。
言葉にすると、たとえばこのくらいの具体さです。
管理職本人 任せ方はLv3にしました。先月の展示会の準備で、目的と期限と判断してよい範囲を決めて部下に任せて、週1回の確認だけで完走できたからです。
部長 その判定でいいと思います。次は目標・評価ですね。前回の評価面談で、部下から「何を頑張れば評価されるんですか」と聞かれて答えに詰まっていたので、いまはLv2。期初に評価の基準を言葉で渡して、面談でその基準に沿って理由を説明できたらLv3、と決めましょう。
見直しは1〜2ヶ月ごとで十分です。同じ軸が2回続けて動いていなかったら、やり方を変えるか、そもそもその軸を選んだ前提を疑ってください。

できれば、同じ6軸で自分の上司にも見てもらってください。自己判断と食い違った軸が、最初に話すべき論点になります。

まとめ

「もっとうまくやる」を「この軸をこの段階まで上げる」に置き換えるのが、この物差しの使い道です。次の4つだけ確認してください。
  • 6つの軸それぞれについて、いまの段階を言葉にできているか
  • その判定に、具体的な場面の裏づけがあるか
  • 次に上げる軸を1つだけに絞れているか
  • 上がったと言える条件を、先に決めてあるか
全軸Lv5である必要はありません。Lv1やLv2で止まっている軸を1つずつ埋めていけば、優秀なプレーヤーは、優秀な管理職に変わっていけます。
部下の現在地を言葉にするときは、この連載の物差しがそのまま使えます。新人・若手には仕事の基礎編を、全軸Lv3の先で伸び悩む中堅には中堅・ベテラン編を渡してください。育成・フィードバックの軸で言う「次の一歩」の道具になります。
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ご回答ありがとうございました