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AI活用の力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方

AI活用の力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方
「AIを使えるようになって」と言われても、次に何をすればいいのかは分かりません。生成AI活用の伸び悩みは、たいてい触った時間やツールの知識ではなく、どの力がどう足りないのかを言葉にできていないことから来ています。

ここでは、職種を問わず使える「AIを使う力」を6つの軸に分け、それぞれを5つの段階として整理します。自分がいまどのあたりにいて、次に何を上げればいいのかを決めるための物差しです。

後半では、目指す地点の決め方から伸ばす順番、次に上げる軸の絞り方まで、この物差しの使い方も扱います。

AIを使う力は6つに分けられる

「AIが使える」と一口に言っても、その中身は同じではありません。毎日触っているのに出てきたものをそのまま使ってしまう人もいれば、慎重なあまり単純作業まで手でやり続けている人もいます。ひとまとめにしている限り、次の一手は決まりません。
機密・リスク管理
入れてはいけない情報や権利関係を、判断できるか
検証・判断
出てきたものの正誤と良し悪しを、自分で判定できるか
修正・仕上げ
AIの出力を、実務で出せる品質に自分で直せるか
指示・依頼
目的と前提を渡して、欲しいものを出させられるか
使いどころの選定
任せる作業と自分でやる作業を、切り分けられるか
業務への組み込み
単発の時短で終わらせず、仕事の流れに定着させられるか
この6つを、それぞれ5段階に分けます。段階が言葉になっていると、「なんとなく使えていない」が「この軸のこの段階にいる」に変わります。

全体はこの一枚に収まります。軸ごとに横へ読んで、いちばん近いマスに印を付けてください。6つの印を縦に見比べると、自分の凸凹が見えてきます。
Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5
機密・リスク管理 そのまま入力してしまう 線引きを説明できない ルールや規約を踏まえて判断できる 条件ごとに変えられる 組織のルールを作る
検証・判断 そのまま使う 違和感止まり 自分で判定できる 間違いを予測できる 検証の仕組みを作る
修正・仕上げ 直せない 部分的に直すだけ 自分の成果物にできる 直すか出させ直すか選べる 仕上げの基準を作る
指示・依頼 一言投げるだけ 行き当たりばったり 狙って出させられる 手順ごと設計できる 指示の型を共有できる
使いどころの選定 全部かゼロか 人の真似だけ 根拠を持って切り分けられる 効く工程を見つけられる 業務全体を設計できる
業務への組み込み 触って終わり 単発の時短どまり 業務に定着している フローを組み直せる 導入と定着を設計する

AI活用の現在地を5つの段階で測る

Lv2以降の冒頭には、前の段階から何が変わるのかを一文で置いてあります。まずそこで自分の当たりをつけ、6つの軸ごとの記述で、いちばん近い段階を確かめてください。記述はどれも典型例なので、ぴったり一致していなくて構いません。Lv1は脱しているが、Lv3には届いていない。その場合は、間のLv2です。

読むときのコツが1つあります。自分がよく見えるほうを選ばないことです。「やろうと思えばできる」ではなく、直近の仕事で実際にできたほうを取ってください。ここを甘く見ると、あとの判断がすべてずれます。毎日触っていることと使えていることは別なので、利用時間や頻度の多さを判定の根拠にしないでください。

使っているツールの新しさは、判定には関係ありません。最新のツールに詳しいかどうかではなく、どのツールでも同じように回せる型があるかを見てください。ツールは入れ替わりますが、この6つの軸は変わりません。

この記事の例は資料や記事、メールといった文章の仕事が中心ですが、画像生成やコードの作成、データ集計に使う場合も、測る軸は同じです。

Lv1 出てきたものを、そのまま使う

AIと自分の間に、まだ判断が挟まっていません。
機密・リスク管理
ログインできない原因を聞くのに、IDとパスワードごと貼り付けている
検証・判断
もっともらしい文体を信じて出した資料の間違いを、会議で先に指摘される
修正・仕上げ
文体が少しAIっぽいなと思いながら、そのまま送信している
指示・依頼
「いい感じにして」と一言だけ送り、出てきたものに文句を言う
使いどころの選定
試しに全部任せて失敗し、「やっぱり使えない」と全部手作業に戻る
業務への組み込み
登録したのは半年前で、最後に開いた日を思い出せない

Lv2 使えてはいるが、当たり外れが大きい

Lv1との違いは、日常的に使っていることです。ただし、結果の当たり外れをまだ自分で制御できません。
機密・リスク管理
まずいらしいとは知っているが、何がどこまでダメかを説明できない
検証・判断
違和感は覚えるが、どこがどう間違っているかを特定できない
修正・仕上げ
気になった箇所は直すが、全体はAIの文体や構成のまま
指示・依頼
やり取りを重ねれば近づけられるが、毎回行き当たりばったり
使いどころの選定
人に聞いた使い方をなぞるだけで、自分の業務に置き換えられない
業務への組み込み
思い出したときに単発で使う。時短になったりならなかったりする

Lv3 判断を挟んで、任せられる

Lv2との違いは、AIと成果物の間に自分の判断が挟まることです。出させる・確かめる・直すが、自分の型になっています。
機密・リスク管理
社内ルールやツールの規約を踏まえて、入れてよい情報の線引きと権利や出所の確認を自分で判断できる
検証・判断
事実確認の方法を持ち、正誤と良し悪しを自分で判定できる
修正・仕上げ
構成やトーンから自分で直し、自分の成果物として出せる
指示・依頼
目的・前提・条件・例を渡して、狙ったものを少ないやり取りで出させられる
使いどころの選定
任せる作業と自分でやる作業を、根拠を持って切り分けられる
業務への組み込み
決まった業務に定着していて、使う前提で段取りを組んでいる
ここが、AIを仕事で使えていると言える状態のひとつの区切りです。

Lv4 仕事に合わせて、使い方を設計できる

Lv3との違いは、目の前の作業だけでなく、業務の形に合わせて使い方を設計できることです。
機密・リスク管理
案件やツールごとの条件(規約・契約)を確かめて、使い方を変えられる
検証・判断
AIが間違えやすいパターンを予測して、確認の重点を絞れる
修正・仕上げ
直す手間と出させ直す手間を比べて、速いほうを選べる
指示・依頼
作業の手順ごと設計して、複雑な仕事を分解して任せられる
使いどころの選定
業務を分解して、AIが効く工程を自分で見つけられる
業務への組み込み
業務フローそのものを組み直して、成果の出方を変えられる

Lv5 チームの使い方を、作る

Lv4との違いは、対象が自分の仕事からチームと組織に変わることです。自分が使いこなすことより、全員が安全に使える状態を作ることが仕事になります。
機密・リスク管理
組織としてのルールを作り、事故を防ぐ仕組みを整えられる
検証・判断
検証の基準と手順を定義し、チェックの仕組みを作れる
修正・仕上げ
仕上げの基準を言語化し、チームの品質を揃えられる
指示・依頼
指示の型を共有できる形にして、誰でも同じ品質を出せるようにする
使いどころの選定
チームの業務全体を見て、どこにAIを入れるかを設計できる
業務への組み込み
チームへの導入と定着を設計し、効果を測れる

目指すのは全軸Lv5ではない

5段階と聞くと、全部をLv5にするのがゴールに見えます。そうではありません。

Lv5は組織のAI活用を引っ張る人の姿であって、全員が目指す地点ではありません。多くの実務は、各軸がLv3であれば問題なく回ります。
補足
当面のゴールは、全軸Lv3です。突出した軸を作るより、Lv1やLv2で止まっている軸を無くすほうが、実務では効きます。
全軸がLv3に揃ったあとのLv4は、全員が順に目指す段階ではなく、役割で選ぶ段階です。チームへの導入を任される、社内の旗振り役になるなど、立場が変わるタイミングで、その仕事に使う軸から上げていきます。
もうひとつ、ゴールの置き方で注意があります。平均点を上げることをゴールにしないでください。6軸の平均が3.2から3.4になったところで、現場で何ができるようになったのかは説明できません。上がったのはどの軸か、そこで何ができるようになったのかだけが意味を持ちます。

AIを使う力を伸ばす順番を飛ばさない

6つの軸は横並びではありません。土台になる軸が低いまま上の軸を鍛えても、どこかで頭打ちになります。

AIを使う力の場合はこの順番です。それぞれ、まずLv3まで上げることを目安にしてください。
  1. 機密・リスク管理
    社内ルールやツールの規約を踏まえて、入れてよい情報の線引きと権利や出所の確認を判断できるところまで。
  2. 検証・判断
    事実確認の方法を持って、正誤と良し悪しを自分で判定できるところまで。
  3. 修正・仕上げ
    構成やトーンから自分で直して、自分の成果物として出せるところまで。
  4. 指示・依頼
    目的・前提・条件を渡して、狙ったものを出させられるところまで。
  5. 使いどころの選定
    任せる作業と自分でやる作業を、根拠を持って切り分けられるところまで。
  6. 業務への組み込み
    決まった業務に定着して、使う前提で段取りを組めるところまで。
指示・依頼が4番目にあるのは意外に見えるかもしれません。AI活用と言えば、まずプロンプトの技術に見えるからです。しかし、良い指示は「何が良い出力か」を知っている人にしか書けません。それを教えてくれるのが、検証と修正の経験です。確かめて直した回数の分だけ、指示は具体的になります。プロンプト集を真似ても伸び悩むときは、この順番を飛ばしていることが主な原因のひとつです。機密・リスク管理が最初なのは、これだけが伸ばす軸ではなく、仕事で使うための条件だからです。事故は一度で信用を失い、以後の活用そのものが止まります。

業務への組み込みが最後なのは、後回しでいいという意味ではありません。定着は、検証と修正の型ができて、使いどころが見えてはじめて起きます。型がないまま組み込みだけ進めると、確かめられていない出力が業務を流れる量が増えるだけです。

1軸だけ選び、1段階だけ上げる

現在地が分かったら、次に伸ばす軸を1つだけ選びます。選ぶのは、前の章の順番で最初にLv3に届いていない軸です。一度に全部は上がりません。6軸を同時に意識した瞬間、どれも動かなくなります。

選んだら、上げるのは1段階だけです。Lv2の軸をLv4にしようとせず、Lv3にすることだけを考えます。

上げ方は、難しく考えなくて構いません。次の段階の記述が、そのまま次の仕事で試す行動です。機密・リスク管理をLv2からLv3にするなら、次に判断に迷う情報を入力しそうになったとき、社内ルールとツールの規約を確かめてから決める。その繰り返しです。
このとき、「なんとなくLv2」で済ませないでください。どの仕事のどの場面でそう判断したのかを、具体的に言葉にします。根拠が書けない判定は、次に何をすればいいかを教えてくれません。

あわせて、その段階に上がったと言える条件も先に決めておきます。決めていないと、上がったかどうかを気分で判断することになります。
言葉にすると、たとえばライターの場合で、このくらいの具体さです。
ライター本人 検証・判断はLv3にしました。先月の記事で、AIに書かせた下書きの統計データを一次情報と突き合わせて、古い数字を2か所差し替えられたからです。
編集者 その判定でいいと思います。次は修正・仕上げですね。同じ記事で、文体がAIのままで媒体のトーンと合っていない指摘が入ったので、いまはLv2。構成とトーンまで自分で直して、AIに書かせたと分からない状態で出せるようになったらLv3、と決めましょう。
見直しは1〜2ヶ月ごとで十分です。同じ軸が2回続けて動いていなかったら、やり方を変えるか、そもそもその軸を選んだ前提を疑ってください。

できれば、同じ6軸で他の人にも見てもらってください。自己判断と食い違った軸が、最初に話すべき論点になります。

まとめ

「もっと使いこなす」を「この軸をこの段階まで上げる」に置き換えるのが、この物差しの使い道です。次の4つだけ確認してください。
  • 6つの軸それぞれについて、いまの段階を言葉にできているか
  • その判定に、具体的な仕事や場面の裏づけがあるか
  • 次に上げる軸を1つだけに絞れているか
  • 上がったと言える条件を、先に決めてあるか
全軸Lv5である必要はありません。Lv1やLv2で止まっている軸を1つずつ埋めていけば、ツールがどれだけ入れ替わっても、AIと仕事をする力は残ります。
この物差しが測るのは、AIを使う力です。その土台になる、職種を問わない仕事の基本動作は仕事の基礎編で同じ形の物差しにしています。あわせて使ってください。
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ご回答ありがとうございました