記事一覧 Webディレクターの力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方

Webディレクターの力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方

Webディレクターの力を6軸×5段階で言葉にする 次に伸ばす1軸の決め方
「もっとうまく回して」「もっと信頼を取って」と言われても、次に何をすればいいのかは分かりません。ディレクターの伸び悩みは、たいてい経験年数ではなく、どの力がどう足りないのかを言葉にできていないことから来ています。

ここでは、Webディレクターの力を6つの軸に分け、それぞれを5つの段階として整理します。自分がいまどのあたりにいて、次に何を上げればいいのかを決めるための物差しです。

後半では、目指す地点の決め方から伸ばす順番、次に上げる軸の絞り方まで、この物差しの使い方も扱います。

想定しているのは制作会社や支援会社のディレクターです。インハウスのディレクターも軸は同じなので、本文の「クライアント」は社内の事業部門に読み替えてください。

Webディレクターの力は6つに分けられる

「ディレクションができる」と一口に言っても、その中身は同じではありません。スケジュールはきっちり守れるのにクライアントの無理な要望を飲んでしまう人もいれば、対応は柔らかいのに案件が常に押している人もいます。ひとまとめにしている限り、次の一手は決まりません。
要件定義
要望を、作れる要件に落とせるか
進行管理
遅れを、起きる前に察知できるか
クライアント対応
根拠を持って、提案も「ノー」も言えるか
制作理解
工数感を把握し、現実的な線を引けるか
チーム運営
意図が伝わる指示で、手戻りを防げるか
数値・成果
公開後の成果まで、責任を持てるか
この6つを、それぞれ5段階に分けます。段階が言葉になっていると、「なんとなく足りない」が「この軸のこの段階にいる」に変わります。

全体はこの一枚に収まります。軸ごとに横へ読んで、いちばん近いマスに印を付けてください。6つの印を縦に見比べると、自分の凸凹が見えてきます。
Lv1 Lv2 Lv3 Lv4 Lv5
要件定義 そのまま制作に流す 聞けるが曖昧さが残る 要件に落とせる 裏の課題を特定できる 施策から提案できる
進行管理 常に押している 遅延に気づくのが遅い リスクを事前に察知できる 遅延を着地させられる 複数案件を設計できる
クライアント対応 持ち帰るだけ 無理な要望を飲む 断るべきものは断れる 固まる前に相談が来る 経営層と対話できる
制作理解 無理な約束をする 自分では判断できない 現実的な線を引ける 代替案を出せる 制作手法から提案できる
チーム運営 指示が曖昧で手戻りする 意図が伝わらないことがある 手戻りを防げる 強みでアサインできる 育成・評価を担える
数値・成果 納品したら終わり 見るが解釈できない 分析して次に活かせる 提案が次の施策になる 事業成果にコミットする

Webディレクターの現在地を5つの段階で測る

Lv2以降の冒頭には、前の段階から何が変わるのかを一文で置いてあります。まずそこで自分の当たりをつけ、6つの軸ごとの記述で、いちばん近い段階を確かめてください。記述はどれも典型例なので、ぴったり一致していなくて構いません。Lv1は脱しているが、Lv3には届いていない。その場合は、間のLv2です。

読むときのコツが1つあります。自分がよく見えるほうを選ばないことです。「やろうと思えばできる」ではなく、直近の案件で実際にできたほうを取ってください。ここを甘く見ると、あとの判断がすべてずれます。ディレクターは案件が無事に終わると全軸できた気になりやすいですが、判定の根拠にするのは案件の結果ではなく、そのなかで自分が下した判断です。

AIを使ったかどうかは、判定には関係ありません。AIに要件のたたきや議事録の整理をさせても、抜けや矛盾に自分で気づけて、判断の部分を自分で持てているなら「できた」に入ります。出てきた文面をそのまま制作に流しただけなら、それはクライアントの言葉がAIの言葉に変わっただけで、Lv1の「右から左に流すだけ」と同じです。

Lv1 間に立つだけで、翻訳できない

クライアントと制作の間にいますが、どちらの言葉もまだ翻訳できていません。
要件定義
打ち合わせのメモをそのまま制作に転送して、要件定義が終わったことになっている
進行管理
いま何が遅れているかは、聞かれてから調べる
クライアント対応
どんな質問にも「持ち帰って確認します」。打ち合わせが、宿題を受け取る場になっている
制作理解
「すぐできますよね?」に「できます」と答えてから、制作に相談しに行く
チーム運営
「いい感じにしておいて」が指示になっていて、出てきたものに「そうじゃない」と言う
数値・成果
公開したサイトは、次のリニューアルの相談まで見ない

Lv2 回そうとはするが、後手に回る

Lv1との違いは、案件を自分で回そうとしていることです。ただし、気づくのも判断も後手に回ります。
要件定義
ヒアリングはできるが、聞き漏らしや曖昧な点を残したまま進んでしまう
進行管理
タスクの管理はできるが、遅延に気づくのが遅い
クライアント対応
説明はできるが、無理な要望を飲んでしまう
制作理解
制作側に確認すれば分かるが、自分では判断できない
チーム運営
指示は出せるが、意図が伝わらないことがある
数値・成果
数値は見るが、そこから何を読み取ればいいのか分からない

Lv3 自分の判断で、案件を守れる

Lv2との違いは、自分の判断で案件を守れることです。根拠を持って線を引き、リスクには起きる前に手を打てます。
要件定義
目的・ターゲット・KPIを言語化し、作れる要件に落とせる
進行管理
工数とスケジュールを自分で組み、リスクを事前に察知できる
クライアント対応
根拠を持って提案と説得ができ、断るべきものは断れる
制作理解
デザインと実装の工数感を把握し、現実的な線を引ける
チーム運営
目的と制約を明確に伝え、手戻りを防げる
数値・成果
KPIを設定し、結果を分析して次の施策に活かせる
ここが、案件をひとりで任せられる状態のひとつの区切りです。

Lv4 一段裏まで、踏み込める

Lv3との違いは、表に出ている要望や数字の、一段裏まで踏み込めることです。要望の裏の課題、遅延時の優先度、メンバーの強み。判断の材料が増えます。
要件定義
クライアントが口にする要望の、裏にある課題を特定できる
進行管理
遅延が起きたときに優先度を判断し、案件を着地させられる
クライアント対応
信頼関係を築き、要望が固まる前の段階で相談が来るようになる
制作理解
技術的な代替案を提示し、コストを調整できる
チーム運営
メンバーの強みを踏まえて、アサインを組める
数値・成果
改善提案まで踏み込み、提案が採用されて次の施策につながる

Lv5 チームと事業を、動かす

Lv4との違いは、対象が目の前の案件からチームと事業に変わることです。自分が回すことより、回る仕組みと人を作ることが仕事になります。
要件定義
事業課題から逆算し、「そもそも何を作るべきか」から提案できる
進行管理
複数案件を並行して回し、リソース配分を設計できる
クライアント対応
経営層と対話し、継続的な取引を作れる
制作理解
技術選定に関与し、制作手法から提案できる
チーム運営
育成と評価を担い、チームを機能させられる
数値・成果
事業成果にコミットし、パートナーとして評価される

目指すのは全軸Lv5ではない

5段階と聞くと、全部をLv5にするのがゴールに見えます。そうではありません。

Lv5は「その職種のトップ」の姿であって、全員が目指す地点ではありません。多くの実務は、各軸がLv3であれば問題なく回ります。
補足
当面のゴールは、全軸Lv3です。突出した軸を作るより、Lv1やLv2で止まっている軸を無くすほうが、実務では効きます。
全軸がLv3に揃ったあとのLv4は、全員が順に目指す段階ではなく、役割で選ぶ段階です。複数案件を束ねる、後輩ディレクターを見る側に回るなど、立場が変わるタイミングで、その仕事に使う軸から上げていきます。
もうひとつ、ゴールの置き方で注意があります。平均点を上げることをゴールにしないでください。6軸の平均が3.2から3.4になったところで、現場で何ができるようになったのかは説明できません。上がったのはどの軸か、そこで何ができるようになったのかだけが意味を持ちます。

伸ばす順番を飛ばさない

6つの軸は横並びではありません。土台になる軸が低いまま上の軸を鍛えても、どこかで頭打ちになります。

Webディレクターの場合はこの順番です。それぞれ、まずLv3まで上げることを目安にしてください。
  1. 制作理解
    デザインと実装の工数感を把握して、現実的な線を引けるところまで。
  2. 要件定義
    目的・ターゲット・KPIを言語化して、作れる要件に落とせるところまで。
  3. 進行管理
    工数とスケジュールを自分で組んで、リスクを事前に察知できるところまで。
  4. クライアント対応
    根拠を持って提案と説得ができ、断るべきものは断れるところまで。
  5. チーム運営
    目的と制約を明確に伝えて、手戻りを防げるところまで。
  6. 数値・成果
    KPIを設定して、結果を分析して次に活かせるところまで。
制作理解が最初にあるのは意外に見えるかもしれません。ディレクターの仕事は要件定義や進行管理に見えるからです。しかし、何にどれくらいかかるのかが分からないまま要件を切っても、スケジュールを組んでも、その数字には根拠がありません。制作理解がLv1やLv2のまま案件を回すと、無理な約束と炎上が構造的に発生します。要件定義と進行管理がその次にあるのは、この2つが案件の前半を決める軸だからです。ここまでが揃うと、クライアント対応も変わります。断るべきものを断れるのは、工数と要件という根拠を自分で持っているからです。

チーム運営と数値・成果が後半なのは、後回しでいいという意味ではありません。手戻りを防ぐ指示は、要件と工数を自分の言葉で語れてはじめて出せるようになります。数値・成果も同じで、KPIは要件定義の質が上がってはじめて設定できる、結果として付いてくる軸です。

1軸だけ選び、1段階だけ上げる

現在地が分かったら、次に伸ばす軸を1つだけ選びます。選ぶのは、前の章の順番で最初にLv3に届いていない軸です。一度に全部は上がりません。6軸を同時に意識した瞬間、どれも動かなくなります。

選んだら、上げるのは1段階だけです。Lv2の軸をLv4にしようとせず、Lv3にすることだけを考えます。

上げ方は、難しく考えなくて構いません。次の段階の記述が、そのまま次の仕事で試す行動です。要件定義をLv2からLv3にするなら、次の案件の着手前に、目的・ターゲット・KPIを1枚にまとめてから制作に渡す。その繰り返しです。
このとき、「なんとなくLv2」で済ませないでください。どの案件のどの場面でそう判断したのかを、具体的に言葉にします。根拠が書けない判定は、次に何をすればいいかを教えてくれません。

あわせて、その段階に上がったと言える条件も先に決めておきます。決めていないと、上がったかどうかを気分で判断することになります。
言葉にすると、たとえばこのくらいの具体さです。
ディレクター本人 制作理解はLv3にしました。先月のサービスサイトの案件で、デザインと実装の工数感から、クライアントに現実的な公開日をその場で提示できたからです。
先輩ディレクター その判定でいいと思います。次は要件定義ですね。同じ案件で、サイトの目的とKPIが曖昧なまま制作に入って、中盤でデザインの方向性に手戻りが出ていたので、いまはLv2。着手前に目的・ターゲット・KPIを1枚にまとめて、クライアントと制作の両方に握れるようになったらLv3、と決めましょう。
見直しは1〜2ヶ月ごとで十分です。同じ軸が2回続けて動いていなかったら、やり方を変えるか、そもそもその軸を選んだ前提を疑ってください。

できれば、同じ6軸で他の人にも見てもらってください。自己判断と食い違った軸が、最初に話すべき論点になります。

まとめ

「もっと頑張る」を「この軸をこの段階まで上げる」に置き換えるのが、この物差しの使い道です。次の4つだけ確認してください。
  • 6つの軸それぞれについて、いまの段階を言葉にできているか
  • その判定に、具体的な案件や場面の裏づけがあるか
  • 次に上げる軸を1つだけに絞れているか
  • 上がったと言える条件を、先に決めてあるか
全軸Lv5である必要はありません。Lv1やLv2で止まっている軸を1つずつ埋めていけば、実務で困ることはほとんどなくなります。
この物差しが測るのは、職種の専門スキルです。その土台になる、職種を問わない仕事の基本動作は仕事の基礎編で同じ形の物差しにしています。専門の軸が伸び悩むときは、土台の側も測ってみてください。
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